感情交換論(アダム・スミス)

Common Ground  
Watch your thoughts ; they become words.........  

| HOME | 勉強会レジュメ | 第3回レジュメ |  

Résumé 勉強会 福祉と自由 第3~4回
第1部 労働 第3回 「感情交換論」2008年9月26日

resume3.pdf 
 

1)前回のまとめと新しい主題
 
前回まで 労働と協業
 1.市場社会は時代、国ごとに「労働の編成」を伴うこと(労働市場)。その解体
 2.労働の原像(2) 本来の労働と、労働の自己疎外(マルクス)
 3.労働の編成の下にある労働者こそが「主体」 cf 福祉国家論
新しいテーマへ 
 1.感情労働:感情の商品化 資本による感情規則と自己による感情の管理
 2.本当の私、本当の感情 自己実現の探求とセラピー :感情の自己疎外論
 3.感情とは何か 市場社会を感情交換社会と見る
 
2)道徳感情論 アダム・スミス1759(水田洋訳、岩波文庫上巻)
 1.社会秩序の形成を「道徳感情」の交換関係から見る。自然的な自由と正義の体系。
 
引用1:「人間がどんなに利己的なものと想定されうるにしても、明らかに人間の本性の中には何か別の原理があり、これによって、人間は他人の運不運に関心を持ち、他人の幸福を、自分にとっても必要なものだと感じるのである。」利己心とは別の、この人間本性が「同感」(sympathy)と呼ばれた。(冒頭)
 
引用2:「社会は、幸福と快適さには劣るけれども、必然的に解体することはないだろう。社会はさまざまな人びとの間で、さまざまな商人の間でのように、その効用についての感覚から、相互の愛情または愛着が何もなくても存続しうる。そして、誰一人互いに何も責任感を感じないか、感謝で結ばれていないとしても、世話をある一致した評価にもとづいて損得勘定で交換することによって、社会は依然として維持されうるのである。」(223頁) 
 
 2.感情交換関係の「疎外」とはどういうことか
 3.売り子とお客、セラピストとクライアント
 
3)感情という経験
 1.同感する私と他者 相手の感情の是認と否認  スミスの説明
 2.感情というものはあるか 感情表現行為。感情とは他者における経験である。言葉
 3.私と他者とは誰か    対、対面、社会関係:「誰」から「何もの」へ
 
4)私と他者との感情交換
 1.私 ⇒ 一人の他者 例:喜びと怒り、・・したい(欲望)、売りたい買いたい。
 
引用:「もし、人間という被造物が、ある孤独な場所で、彼自身の種との何の交通もなしに成長して、成年に達することが可能であったとすれば、彼は彼自身の顔の美醜についてと同じく、彼自身の性格について、彼自身の感情と行動の適切性または欠陥について、彼自身の精神の美醜について、考えることもできないだろう。これらすべては、彼が容易に見ることができず、自然に注視することがない対象なのである。そして、彼がこれらに眼を向けることができるようにする鏡も与えられていない。彼を社会のなかにつれてこよう。そうすれば彼はただちに、彼が前にもたなかった鏡を与えられる。」(293頁)
 
 2.他者 ⇒ 私  交換、交感、交歓 
 3.感情の等価交換 同感、適切性、是認 (道徳)感情の是認(等価交換)を願う
 4.関係の対称性と非対称性 関係の挫折 関係の拡張の必然性
 5.特権的他者(鏡=鑑) 幼児と母親、クライアントとセラピスト
 6.方法上の問題 記述の出発点 背景にある道徳社会(伝統、風土、習慣、協業)
 
5)私と他者たち
 1.私 ⇒ 他者A、他者B、他者C・・・
 2.自然状態のアナーキー 感情交換の「震央」(私)のカオス
 3.不等価交換の発見
 
引用:私は「この世に生まれ出ると、他人を喜ばせたいという自然的欲求から、交際するすべての人にとって、どんなふるまいが快適であるかを考慮するように自分を習慣づける。あらゆる人の好意と明確な是認とを得るという不可能で道理に合わないもくろみを追及する。しかしながら、まもなく経験によって、この明確な是認が普遍的にはまったく獲得できないものであることを知る。一人の人を喜ばせることによって、ほとんど間違いなく別の人を怒らせることを知る。」(307頁)
 
 4.他人の同感を得たいという本性 感情の自己調整と淘汰
 
6)他者たちと私 関係の根本的な変容
 1.関係の転倒 他者A、他者B、他者C・・・ ⇒ 私
 2.特権的な鏡(鑑:規範)としての私
 3.私の振る舞い方を媒介にした、他者たちの相互関係が成立する
 4.私の二重化(身柄と鑑) 感情規範の私からの超出と遍在化
 5.私的な感情規則(基準)、言葉、感情交換の通貨
 6.疎外 私の感情の調整(同調、切り詰め、肥大化)。他者たちの感情の淘汰
 7.私の仲間(家族、友人、同業者、同胞)の成立 非仲間の排除
 8.世間worldへ:世間=[私の仲間、他の仲間A、他の仲間B、・・・]
 
引用:「最小の同感と寛大さしか世間から期待できない。それでも、孤独の暗黒の中で嘆いたり、親しい友人たちの寛大な同感だけを頼りにしてはならない。できるだけ早く、世間と社会の日光のなかに戻らなければならない。私の悲運あるいは幸運について何も知らず気にもかけていない見知らぬ人びと共に暮さねばならない。敵との同席ですら避けてはいけない。(443−4頁)。
 
7)公平な観察者
 1.胸中の公平な観察者、裁判官、控訴審、抽象的人間、人類の代表、神の代理人
 
引用:「他人の一方的な判断から自分自身を守るために、われわれは間もなく、自分と自分が一緒に生活する人びとの間の裁判官を心の中に設け、彼の前で行為していると思うようになる。彼は非常に公平で公正な人物であり、自分にたいしても、自分の行動によって利害を受ける他の人びとにたいしても、特別の関係を何ももたない人物である。彼は、彼らにとっても自分にとっても、父でも兄弟でも友人でもなく、単に人間一般、中立的な観察者であり、われわれの行動を、われわれが他の人びとの行動を見る場合と同じように、利害関心なしに考察する存在である。」(307頁)
 
 2.公平、中立、利害関係の超越、人間一般、擬人化はどのレベルで成り立つか
 3.私の仲間のレベルで、「公平な観察者」は初めて成立しうる。
 
8)道徳感情の一般的諸規則
 1.私の集団 ⇒ 他者の集団A,B,・・・
   集団のアナーキーとしての世間、集団感情の不等価交換、集団感情の調整・淘汰
 2.他者の集団A,B・・・ ⇒ 私の集団
   私の集団を媒介にした諸集団の相互関係、私の集団の二重化、世間の感情規則、集団的疎外、
   集団感情の調整と淘汰(同調、切り詰め、肥大化)、社会的集団
 3.一般的道徳感情規則が私の集団から超出して流通する
 
引用:「自然はこれほど大きな重要性を持つ弱点(自己欺瞞、利己心)を、まったく矯正することなしに放置してはおかなかったし、われわれを自愛心の妄想に委ねるままにはしなかった。他の人びとの行動を継続的に観察することによって、われわれは気づかぬうちに、何がなされたり回避されたりするのにふさわしく適切であるかについて、一般的諸規則を心のなかに形成する。」(327頁)
 
 4.一般的諸規則 正義と慈恵:義務の感覚
 
引用:「われわれの内面にある神の代理人は、それにたいする侵犯を内面的恥辱と自己非難の責苦によって処罰しないではおかないし、反対に、従順にたいしては常に心の平静、満足、自己充足をもって報いるのである。」(336頁)
 
 5.功利主義的倫理
   倫理とは、第一:幸福の追求の権利、第二:他者危害の禁止(フェアプレー)
 6.社会の道徳的絆の「自然的な自由と正義の学説」vs 理性の哲学、神の法
 
9)道徳規則の動的安定
 1.倫理と道徳の乖離 集団のアナーキーと道徳規則の超出
   特権階級のものか、知識人による文章か、最大公約数か、良俗か
 2.世間の諸集団の震央 勤労industry集団(資本家と労働者)
 
引用:野心と虚栄心「同感と好意と明確な是認をもって注目されたい」(129頁)。勤労集団は「そのために支払うべき資金は自分の肉体の労働と精神の活動をおいてほかにない。したがって、彼らは優越した専門知識、勤勉、労働の忍耐、危険に立ち向かう決断、困苦に耐える不動の精神を涵養しなければならない。そして、仮借ない努力によって、これらの能力が公共の目にとまるようにしなければならない。自身を際立たせる機会とあらば、彼らは戦争や騒乱の到来さえひそかに待ち望むのである」(142頁)。
 
 3.労働の編成を中心として社会を見る
 4.虚栄、対他承認欲望、役割遂行、相互承認
 5.市場社会の個人 孤独と神経症 vs 利己心とその調整機構
 
10)応用 福祉労働の集団
 1.顧客―専門職の感情交換 関係の対称と非対称、等価交換を求めて、同感共鳴
 2.感情とは何か 感情交換の疎外、「本当の感情」というものはない、燃え尽き
 3.顧客―専門職の二元関係の脱却拡張 専門職間の感情交換
 4.感情規則の析出と集団内の共有 個人感情と集団の感情規則との調整
 5.感情訓練と集団に独自の感情規則の形成
 6.顧客と専門職との機能的非対称性 専門職の技能を感情交換に合体する
 

inserted by FC2 system